2026年06月11日
~共同親権と法定養育費~
日本では、年間およそ50万組の夫婦が結婚する一方で、約18万組が離婚しています。
「3組に1組が離婚する」といわれるのは、この数字によるものです。
離婚の際に決めるべき重要な事項の中でも、特に子どもの健全な成長に関わるのが
「親権」と「養育費」です。
しかしこれまで、この2つについては多くの課題が指摘されてきました。
まず、民法では離婚時に父母のどちらか一方を親権者とする「単独親権」が原則であり、
親権を巡る争いが絶えませんでした。
一方、世界的には父母双方が関わる「共同親権」が主流であり、日本は例外的な存在でした。
こうした背景から、国連などからも制度見直しの必要性が指摘されていました。
また、日本の離婚の約9割は家庭裁判所を通さない「協議離婚」です。
そのため、
・養育費を決めないまま離婚する
・取り決めても支払われない
といったケースが多く、ひとり親家庭の経済的困窮が社会問題となっていました。
こうした課題を受け、民法(家族法)は77年ぶりに改正され、
2026年4月1日から「共同親権」と「法定養育費」の制度がスタートしています。
「親権」とは、子どもの生活や教育、財産管理などを行う権利であり、同時に責任でもあります。
今回の改正では、親権は「子の利益のために行使するもの」と明確に位置づけられました。
そして離婚後も、父母が共同で重要事項を決める「共同親権」を選択できるようになりました。
すでに離婚して単独親権となっている場合でも、共同親権へ変更することが可能です。
ただし、すべてを共同で決める必要はありません。
・日常生活に関すること → 同居している親が判断
・進学、転居、医療など重要事項 → 父母で協議
という形で役割が分かれます。
また、共同親権と単独親権に「原則・例外」はなく、
家庭裁判所が子どもの利益を最優先に個別判断します。
例えば、DVや虐待がある場合には、
子どもの安全を守るため単独親権が選ばれます。
離婚後も、父母双方には子どもを養う義務があります。
子どもが「親と同じ水準の生活」を送れるよう支える責任です。
従来は、養育費は話し合いで決める必要がありましたが、
決めずに離婚するケースが多いことが問題となっていました。
そこで今回、「法定養育費」が新たに設けられました。
これは、取り決めがなくても
子ども1人あたり月2万円を請求できる制度です。
離婚と同時に自動的に発生しますが、あくまで暫定的な金額であり、
その後、話し合いや家庭裁判所で正式な金額が決まれば差額を精算します。
なお、この制度は2026年4月1日以降の離婚が対象で、
それ以前の離婚には適用されません。
養育費の「未払い問題」に対しても改善が図られました。
これまで差し押さえを行うには、公正証書や調停調書といった
公的な書類が必要でした。
しかし改正により、私的な合意書でも差し押さえが可能となりました。
ただし、上限は子ども1人あたり月8万円とされています。
養育費は従来通り非課税です。
法定養育費・正式な養育費のいずれも、受け取る側に所得税や贈与税はかかりません。
また、所得税の扶養控除は、
子どもと「生計を一にする」父母のどちらか一方が適用できます。
同居・別居や親権の有無に関係なく、
養育費を支払っている親が適用できるケースもあります。
さらに、条件を満たせば「ひとり親控除」も適用可能です。
どちらの親が控除を受けるかは、事前にしっかり検討しておくことが重要です。
今回の家族法改正は、「子どもの利益」を最優先に据えた大きな転換です。
・共同親権の導入
・法定養育費の創設
・未払い対策の強化
これらはすべて、離婚後も子どもが安定した環境で育つための仕組みです。
制度が整った今こそ重要なのは、
親がその意味を正しく理解し、適切に活用することです。
子どもの将来を守るために、
「制度を知ること」そのものが、大きな一歩となるでしょう。
※なお、扶養控除を適用する親は、ひとり親控除も使える可能性があります。父母のどちらが使うか、事前の検討や相談が必要になるため、その点も留意しておきましょう。