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「高額療養費、知らないと“戻ってくるお金”を受け取れない?」

医療保険

2026年08月20日

2026年8月より「高額療養費制度の見直し」が施行

今回の改正で大きく変わったのが、医療費の月額上限の引き上げです。

引き上げ幅は所得区分によって異なりますが、月数千円から2万円弱となります。

詳しい内容については、6月公開のプレミアムニュース「どうなる? 8月からの高額療養費制度~年間上限の新設も」で解説していますので、そちらも参考にしてください。

今回は、この改正に伴って新設された**「年間上限」**について、もう少し詳しく見ていきます。

「年間上限」とは?

「年間上限」とは、その名のとおり、1年間に支払う医療費の自己負担額に設けられる上限です。

抗がん剤治療など、長期間にわたって高額な治療を受ける患者の経済的負担を考慮して設けられた仕組みです。

具体例で見てみましょう。

月収40万円の会社員Aさんが、長期間にわたって抗がん剤治療を受けているとします。

毎月の医療費の自己負担額は約8万2,000円です。

見直し前の高額療養費の月額上限は8万100円だったため、Aさんは4カ月目から「多数回該当」の対象となり、月額上限は4万4,400円まで引き下げられました。

ところが、改正後のAさんの月額上限は8万5,800円となります。

そのため、毎月の自己負担額が約8万2,000円の場合、月額上限を超えず、「多数回該当」の対象になりません。

仮にこの治療が1年間続けば、自己負担額は約98万円になります。

そこで、今回の改正では、こうした長期治療による負担増を緩和するために「年間上限」が設けられました。

Aさんの所得区分では年間上限が53万円です。

つまり、年間の自己負担額が約98万円となった場合、年間上限との差額である約45万円が払い戻しの対象となります。

一見すると大きな負担軽減ですが、ここには注意すべきポイントがあります。

「年間上限」は、カウントする期間に注意

年間上限は、今回初めて導入された制度ではありません。

これまでも、70歳以上で所得区分が「一般」または「住民税非課税」に該当する人については、外来特例に年間上限が設けられていました。

今回の改正では、この仕組みを全世代・全所得区分に広げる形になっています。

ここで、ぜひ知っておいていただきたいのが、「年間」の考え方です。

年間上限は、必ずしも「自分が治療を始めた日から1年間」という意味ではありません。

対象となる期間は、8月から翌年7月までです。

この期間内に支払った自己負担額を累計し、年間上限を超えた場合に、その超過分が払い戻されます。

では、なぜ「8月から翌年7月」なのでしょうか。

現行の70歳以上の年間上限についても、医療保険制度の切り替え時期である8月から翌年7月までを1年間として計算しています。

今回の制度では、この仕組みを活用したものと考えられます。

例えば、Aさんが2月から治療を始めた場合

Aさんが2月から1年間、毎月約8万2,000円の自己負担で抗がん剤治療を受けたとします。

2月~7月の6カ月間では、

8万2,000円 × 6カ月 = 49万2,000円

となります。

年間上限は53万円ですから、この時点では年間上限に達しません。

そして8月になると、新しい年間のカウントが始まります。

8月~翌年1月についても同様に、

8万2,000円 × 6カ月 = 49万2,000円

となります。

結果として、1年間で約98万4,000円を負担することになります。

ここが、「年間上限」という言葉だけを見ていると分かりにくいところです。

一方、「多数回該当」は考え方が異なります。

多数回該当は、直近12カ月間に高額療養費の対象となる月が3回あると、4カ月目から自己負担限度額が引き下げられる仕組みです。

つまり、多数回該当は「自分を基準とした直近12カ月」で計算されます。

年間上限についても、治療を受ける人の実際の負担をより反映できるよう、「直近12カ月」のような考え方になれば、より分かりやすい制度になるのではないでしょうか。

国民健康保険の方は「払い戻し」に注意

もう一つ、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。

高額療養費の「払い戻し」には、主に次のようなケースがあります。

  1. 月額の自己負担上限を超えた場合
  2. 多数回該当に該当した場合
  3. 同じ世帯の家族や、複数の医療機関で支払った医療費を合算して上限を超えた場合
  4. 年間上限に該当した場合

マイナ保険証を利用し、医療機関のカードリーダーで「限度額情報の提供」に同意すると、原則として、窓口で支払う金額を自己負担限度額までに抑えることができます。

ただし、これですべての高額療養費が自動的に処理されるわけではありません。

例えば、複数の医療機関で支払った医療費を合算するケースや、年間上限に該当するケースでは、いったん窓口で支払った後、後日、加入している健康保険から払い戻される場合があります。

会社員や公務員が加入する健康保険では、加入している健康保険が計算し、超過分を払い戻す仕組みが整えられているケースが多くあります。

一方、注意したいのが国民健康保険に加入している方です。

国民健康保険の場合、自治体によっては、高額療養費について「申請してください」という通知が届き、本人が申請して初めて払い戻しを受けられる場合があります。

つまり、

「本来なら払い戻されるはずのお金を、自分が申請しなかったために受け取っていない」

ということが起こり得ます。

「自分の自治体はどうなっている?」を確認しましょう

以前、いくつかの自治体に「高額療養費の払い戻しが発生した場合、該当通知を出していますか」と電話で確認したことがあります。

当時は、通知を出していない自治体が多く、「システムがない」と説明する自治体も少なくありませんでした。

その後、改めて自治体に確認したところ、システム整備が進み、高額療養費に該当した場合に通知を出す自治体も増えていました。

ただし、通知が届けば自動的に振り込まれるとは限りません。

「通知が届く → 本人が申請する → 払い戻される」

という仕組みの自治体もあります。

また、自治体によっては、そもそも高額療養費の該当通知を出していないケースもあります。

そのため、国民健康保険に加入している方は、一度、

「高額療養費に該当した場合、自治体から通知は届きますか?」

と、お住まいの自治体に確認しておくと安心です。

通知が来ない仕組みであれば、特に高額な治療を受けた場合には、自分自身で医療費を確認し、払い戻しの対象になっていないかを確認することが大切です。

「知らなかった」で損をしないために

高額療養費制度は、医療費の負担が大きくなったときに家計を守る重要な制度です。

しかし、制度が複雑になればなるほど、

「自分は対象なのか?」

「いつからいつまでが計算期間なのか?」

「払い戻しは自動なのか?」

が分かりにくくなります。

特に今回の改正では、「年間上限」が新設されたことで、長期治療を受ける方にとって重要なポイントが増えました。

そして、国民健康保険に加入している方は、

「高額療養費は、該当すれば必ず自動的に戻ってくる」

とは限らないことも覚えておきたいところです。

医療費が高額になったときこそ、

「自分は払い戻しの対象になっていないか?」

を確認する。

それだけでも、「本来受け取れるはずだったお金」を受け取り損ねるリスクを減らすことができます。

 

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