2026年09月01日
第108回 アシスト通信 2026年9月号
「株の利益は20.315%」だから安心?
――分離課税でも「他の所得」と関係する税制――
上場株式等の譲渡益は原則として、
所得税・復興特別所得税 15.315%+住民税 5%=20.315%(分離課税)
※参考:国税庁「上場株式等に係る譲渡所得等の課税」
ところが――
「分離課税だから、他の所得とは完全に別」とは言い切れない制度があります。
それは「高額所得者対象」
「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」2023年導入
これは、通常の所得税だけでは負担が十分でないとされる「極めて高い所得」の人について、追加的な税負担を求める仕組み。
「基準所得金額」
国税庁によると、この基準所得金額は、総所得金額+分離課税の各種所得金額を合計して算定します。
つまり、一定の条件のもとで、
給与所得+事業所得+不動産の譲渡所得+株式の譲渡所得+その他の対象となる所得などを合算して該当するかを判定するのです。
※参考:国税庁「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」
「えっ? 株は“分離課税”なのに?!」株式の譲渡益そのものの課税方式が、総合課税に変わったわけではなく、株式の利益は基本的にこれまでどおり分離課税です。
しかし、「極めて高い所得の人に追加負担が必要か?」を判定するときには、分離課税の所得も含めて「基準所得金額」を株式利益は原則20.315%と計算し、そのうえで、極めて高い所得に対する追加負担
→ 給与・事業・不動産・株式などを一定のルールで合算して判定という、二重構造。
さらに今回、控除額が「半分」に削減!
そして2027年分の所得税から、この制度がさらに見直されます。
特別控除額が3億3,000万円 → 一気に半分の1億6,500万円へ引き下げ。
さらに税率も22.5% → 30%へ引き上げ。
この改正で財務省は2,870億円の増収見込んでいる。
※参考:財務省「令和8年度税制改正の大綱」
「自分には関係ない」と思っていい?
一般的な投資家にとって、直ちに影響する制度ではありません。
株で利益が出たからといって、突然30%課税になるわけではありません。
あくまで極めて高い水準の所得がある人が対象。
しかし、今回注目したいのは「1億6,500万円」に半減したという事実です。
財務省が今後「税制は一度決まったら永久に変更しない」とも「控除額を引き下げる」とも公表しているわけではありません。したがって、「次は1億円、その次は5,000万円になる」などと断定することはできませんが、今後の税制改正(ステルス増税)を注視することが重要です。
そして、NISAにも注目しなければいけません。
NISAは、一定の投資枠の中で得られる売却益や配当等が非課税となりますが、
NISAに「社会保険料を加算しない」と明記されているわけではありません。
なんと!「社会保険料の算定に反映させる」ことについても、現在さまざまな議論があります。
このNISAへの社会保険料加算に関しての議論の行方にも引き続き注視しておく必要があります。
今回のポイント
① 株式の利益は原則20.315%の分離課税
② ただし、極めて高い所得に対する別の負担制度がある
③ その判定では、分離課税の所得も含めて「基準所得金額」を計算する
④ 2027年分から特別控除額が3億3,000万円→1億6,500万円に半減
⑤ 今後さらに制度が変わる可能性については、決めつけずに注視する
税金は、利益が出たときに考えるものではなく、「知ったうえで選択する」
NISA、特定口座、確定申告、そして今後の税制改正を理解しておくことも、長期的な資産形成では大切なポイントでしょう。
★本稿は2026年8月時点で公表されている情報をもとに作成しています。税制は今後変更される可能性があります。個別の税務については、税理士等の専門家にご確認ください。
参考:財務省「令和8年度税制改正の大綱」・国税庁「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」・国税庁「上場株式等の譲渡所得等の課税」
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宮本新治 2026年8月28日