2025年08月08日
iDeCoと退職金 ~ 受け取り時の税制変更について
iDeCo(確定拠出年金)には、運用益が非課税、掛金が全額所得控除、そして受け取り時に優遇措置がある3つの税制メリットがありますが、2025年度の税制改正により、受け取り時の税制に少し変化があります。
DCの積立金を一時金で受け取る場合、「退職所得控除」が適用されます。退職所得控除は、勤続年数に応じて以下のように計算されます:
20年以下: 40万円×勤続年数(最大80万円)
20年超: 800万円 + 70万円×(勤続年数-20年)
たとえば、21年勤務して退職金が1000万円の場合、退職所得控除額は870万円となり、課税対象額は (1000万円 – 870万円) × 1/2 = 62万円 となります。退職所得は非常に税制優遇されていることがわかります。
DCの積立年数は勤続年数に含まれますが、退職一時金とDC一時金の受け取りについては、同じ年に複数の退職金を受け取る場合、最も長い勤務期間に基づいて計算されます。
2025年4月に改正される高年齢者雇用安定法により、65歳までの雇用確保が義務化され、定年が65歳に引き上げられる傾向が強まります。そのため、DC一時金を60歳で受け取るニーズが増えることが予想されます。
これに伴い、退職所得控除に関する「5年ルール」が改正され、2026年1月1日以降にDC一時金を受け取り、その後退職一時金を受け取る場合、「10年ルール」が適用されます。つまり、DC一時金を受け取った場合、70歳以降に退職一時金を受け取らないと、それぞれ別に満額の退職所得控除を受けられません。
さらに、60歳で退職一時金を受け取る場合、20年未満であれば(例:80歳まで)、DC一時金で満額の退職所得控除を使えない「19年ルール」が適用されます。iDeCoの受取開始年齢の上限は75歳なので、60歳以降も掛金を拠出しても満額の退職所得控除は適用されません。
「10年ルール」や「19年ルール」に該当しても、退職所得控除が全く使えないわけではなく、調整が行われます。満額の退職所得控除が使えなくても、課税対象額の半分(受取額から退職所得控除を引いた額の2分の1)だけが課税されるため、税制優遇は依然として有利です。
また、一時金ではなく年金として受け取ると、公的年金等控除が使えますが、公的年金などと合算すると、税金や健康保険・介護保険料が増加する場合があるので、慎重に検討する必要があります。