ここ数年、エネルギー、食品、建築費などなどすべて、物価高が続けています。特に子育てにかかる費用は、高校の授業料が実質無償化されるとはいえ、塾、アパート代など親の負担は非常に大きなものであることは変わりありません。また、大学受験は滑り止めに受ける大学の「受験料」や入学もしない大学の「入学金」も支払う必要があったり、授業料だけで4年間で600万以上と莫大です。と言ったところから奨学金に頼りすぎると卒業後の返済に行き詰まり「自己破産」といった悲惨な状況に追い込まれるケースも決して少なくありません。こういった状況から、シニア世代のお客様からは「子どもの家計を少しでも援助したい」というご相談も増えています。
そこで今回は、生活費や教育費の援助に対する「課税」について解説します。
「生活費や教育費を援助した時の贈与税は? 」
みなさんの日々の生活費は誰が負担しているでしょうか?
生活費などを負担し合わなければならない関係のことを「扶養義務者」といいます。
生活費などを負担し合わなければならない関係のことを「扶養義務者」といいます。
相続税法では、配偶者、直系血族、兄弟姉妹などが扶養義務者と定められ、この間柄での生活費や教育費の援助は、「原則として」贈与税が「非課税」とされています。
そもそも非課税なので、年110万円という暦年課税の非課税枠を考慮する必要はありません。
また、扶養義務者が複数いる場合でも、誰が優先的に扶養するべきかについて、関係の近さや資力の多寡によるといった決まりはないのです。
従って、親子に限らず祖父母と孫も「直系血族」の間柄であり、孫の教育費を祖父母が負担しても、贈与税は「原則として」かかりません。
たとえ孫の親である子の年収が高くても、祖父母による援助の目的が相続税対策だったとしてもです。
もし三世代が同居しているなら、わざわざ贈与をしなくても、祖父など最も財産の多い人が一家全体の生活費を賄えば、贈与税の負担なく合法的に、将来の相続税の課税対象となる財産を減らせます。
ちなみに、扶養義務者の「扶養」の意味は、所得税や社会保険における「扶養に入れる・入れない」とは別の概念なので、その点は気にしなくていいでしょう。
ただ、「原則として」非課税と述べたのには理由があります。
非課税で援助するには、いくつか条件があるからです。
まず、生活費や教育費名目ならいくらでも、限度なくで非課税になるわけでは‥ありません。
あくまで「通常必要と認められるもの」に限ります。
そもそも、どの程度が「通常必要」なのかは家庭ごとに千差万別なので、上限いくらまでという金額の基準は設けることは不可能でしょう。
必要性や資力など、「一切の事情を考慮して社会通念上適当と認められる範囲」という判断基準を、国は示しています。
この「通常必要と認められるもの」には、日常の衣食住にかかる費用に加え、特別な医療費なども含まれます。
大学院や医学部への進学費用、留学費用などの多額の学費も、家庭環境や教育水準、本人の能力などからその教育費が必要な場合は、非課税になると考えて構いません。
必要な都度、直接、生活費や教育費に充てるものだけ 。
さらに、その援助が「必要な都度」「直接、生活費や教育費に充てるため」に行われている必要があります。
祖父母が孫の大学4年間分の学費を、まとめて孫の口座に一括で振り込むケースは「必要な都度」とはいえません。
祖父母自身が直接大学に学費を振り込むなど、必要な都度、援助した方がよいでしょう。
※離婚や非嫡出子の認知の際、将来、子の養育費が支払われなくなるリスクを避けるため、親権者や監護者にならなかった側の父母から、一括で金銭を受け取ることがあります。
これは、生活費や教育費として子の年齢などからみて相当と認められる額の場合は、一括払いでも例外的に贈与税は非課税として扱われます。
そして、少々、話がそれますが。
親族に「お金を貸す」時の注意点 ですが。
子や孫がマイホームを買う時に‥
お金を「あげる」のではなく、「貸して」援助することもできます。
不動産価格が上がり、「贈与したいが住宅取得資金特例の非課税枠では足りない」、「あげる余裕はないが、貸すことならできる」というご家庭は多いと思ます。
この時に一番怖いのは「貸したお金の全額に贈与税がかかる」
つまり、貸付を装った贈与だと税務署から指摘されることです。
返済期日・方法・利率を定めた書面を作り、署名押印の上保管しておきましょう。
多少の返済日のズレや返し忘れは問題視されませんが、
「出世払い」や「あるとき払いの督促なし」は絶対にダメです。
他人同士の貸し借り同様、契約通りに振込で返済(証拠)しましょう。
たとえ無利息でもきちんと返済を続けていれば、貸付額の全額を贈与認定されることはありません。
利息相当額に贈与税が課せられる可能性はありますが、暦年課税なら非課税枠の年110万円に収まることが大半です。
肝心なのは身内だからといってあいまいにせず、他人に貸すときと同じようにすることです。
贈与税の各種特例に加え、既存の制度も上手に活用しながら、家族でこの物価高を乗り切ってまいりましょう。
子どもと家族の未来を考える会®認定講師