2026年09月10日
「最近、欲しいものがないな……」
そんなふうに感じることはありませんか?
給料は増えているのに、消費の伸びは鈍いようです。総務省の家計調査によると、2026年6月分の2人以上世帯の消費支出は、前年同月比で実質3.3%減。7か月連続の減少となりました。
もちろん、物価高の影響もあります。
一方で、私たちの暮らしを見渡してみると、冷蔵庫も洗濯機もスマートフォンも、必要なものはすでに一通り揃っています。
「今、何が欲しいですか?」
そう聞かれても、
「うーん……特にないかな」
という人も、決して少なくありません。
中古市場が活況なのも、「新品を買って所有すること」にこだわらない人が増えていることの表れかもしれません。
こうした消費者の変化に対して、販売する側が今、期待を寄せているのが「AI」です。
そしてAIは、単に「欲しいものを探してくれる」だけではありません。
なんと、「あなたが将来、何を買うのか」まで予測しようとしているのです。
これまでのネットショッピングは、
「これが欲しい」
↓
「Googleなどで検索する」
↓
「商品を比較する」
↓
「購入する」
という流れが一般的でした。
つまり、人間が欲しいものを決めて、ネットがそれを探すという「ヒト主体型」の買い物です。
ところが、生成AIの登場によって、この関係が少しずつ変わり始めています。
楽天市場やYahoo!ショッピングなどの大手ECプラットフォームでは、生成AIを活用した「買い物エージェント」や「コンシェルジュ」のようなサービスが進められています。
例えば、
「今度、家族で沖縄に行くんだけど、何を準備したらいい?」
とAIに聞く。
すると、
「日焼け止め」
「水着」
「サンダル」
「帽子」
「防水バッグ」
など、旅行に必要そうなものをまとめて提案してくれる。
さらに、
「予算は3万円くらい」
「子どもも使えるもの」
「できるだけ軽いもの」
などと条件を伝えれば、その条件に合った商品を探してくれる。
そして、そのまま購入まで進める。
これまでなら「自分が欲しいもの」を検索していたのが、これからは**「何を買えばいいのか」そのものをAIに相談する**時代になっていくわけです。
しかも、ここには販売する側にとって大きなメリットがあります。
AIが、
「これもあると便利ですよ」
と提案してくれるからです。
自分では買うつもりがなかった商品まで、気づけばカートに入っている……。
AIによって、新しい「消費のきっかけ」が生まれる可能性があります。
AIが活躍するのは、単純な商品探しだけではありません。
例えば、冠婚葬祭などのギフト。
「祖母の長寿のお祝いをしたいんだけど、贈ってはいけないものってある?」
こんな相談もできます。
自分で検索して、いくつものサイトを読み比べるより、AIに聞いたほうが早い。
ただし、マナーや慣習などは地域や相手によって違うこともあります。
AIの回答が必ず正しいとは限りませんから、重要な場面では最終確認が必要です。
また、子どもの買い物でも便利です。
例えば学校から、
「○○cm、白色、指定メーカーの運動靴を用意してください」
といった連絡が来たとします。
その文章をAIにそのまま貼り付けて、
「この条件に合う商品を探して」
と頼む。
すると、条件に合いそうな商品を候補として出してくれる。
これまでなら、親がネットショップを何件も見て探していた作業を、AIに任せられるわけです。
忙しい子育て世帯にとっては、かなり助かる機能になるかもしれません。
さらに面白いのが、洋服の「バーチャル試着」です。
スマートフォンで自分の写真を撮る。
その写真をもとにAIが、
「この人には、こんなスタイルが似合いそう」
とコーディネートを提案する。
そして気になる洋服を選ぶと、
「実際に着たら、こんな感じになります」
というイメージをAIが画像で作ってくれる。
つまり、ネットショッピングでありがちな、
「写真では良さそうだったのに、実際に着てみたら全然違った……」
という失敗を減らせる可能性があります。
ネットで洋服を買う最大の弱点だった「実際に着てみられない」という問題を、AIが少しずつ埋めようとしているわけです。
買い物が、
「探す」→「比較する」→「買う」
から、
「相談する」→「提案してもらう」→「試着してみる」→「買う」
へ変わっていくのかもしれません。
ここからが、さらに面白いところです。
AIを活用すると、
「今、何が欲しいのか」
だけではなく、
「この人は、数か月後に何を買う可能性が高いのか」
まで予測できるようになってきています。
楽天グループのように、多くの会員IDを持つ企業では、膨大な購買データを分析することで、消費者の次の購買行動を予測し、販売促進に活用しています。
例えば、
「アウトドア用品を購入した人は、その数か月後にシャンプーを購入する傾向がある」
というデータがあれば、
「アウトドア用品を買った人」に対して、数か月後にシャンプーの広告を表示する。
そんなことも可能になります。
本人は、
「そういえば、そろそろシャンプーがなくなるな」
と思っているだけなのに、その少し前に広告が出てくる。
偶然でしょうか?
……いえ、AIからすると「予測」なのです。
さらにデータが蓄積されていけば、予測できることは増えていきます。
例えば、
「この商品を購入した人は、その後こういう商品を買う傾向がある」
というデータを何年も蓄積していけば、
「この人は、そろそろ○○が必要になるかもしれない」
という予測もできるようになります。
例えば、ある人がマタニティ用品を購入した。
その後、ベビー用品を購入した。
さらに数年後には、家具や家電、住宅関連の商品を購入する人が多い。
そんな消費行動のパターンが見えてくれば、AIは次に必要になりそうな商品やサービスを先回りして提案できます。
「そろそろ子ども部屋の家具はいかがですか?」
「新しい家に合う家電はこちらです」
「住宅ローンについて調べてみませんか?」
「生命保険について考える時期かもしれません」
……といった具合です。
もちろん、実際に何が表示されるかはサービスや利用状況によって異なります。
ただ、私たちが日々利用しているポイントサービス、ECサイト、スマートフォンなどに蓄積されるデータが、「過去の買い物記録」から「未来の消費予測」へ利用される可能性は、ますます高まっていくでしょう。
ここまで来ると、少し怖くなってきませんか?
これまでは、
「欲しいものを探して買う」
のが普通でした。
ところがAIの時代になると、
「あなたは、これを買う可能性が高いですよ」
と、AIのほうから先に提案してくる。
しかも、その提案は、過去の自分の行動データをもとにしている。
自分でも気づいていなかった「次に必要なもの」を、AIのほうが先に知っている。
便利である一方で、
「自分の消費行動を、自分よりAIのほうが分かっている」
という状況にもなり得ます。
これは、販売する企業にとっては大きなチャンスです。
「欲しいものがない」という消費者に対して、AIが新しい購買のきっかけをつくってくれるからです。
一方、消費者にとっては、
「便利だから全部AIに任せる」
ではなく、
「AIの提案を参考にしながら、自分で決める」
という姿勢も大切になってきそうです。
買い物だけではありません。
家計管理や資産形成についても、AIに相談する人はこれからさらに増えていくでしょう。
「毎月いくら貯金すればいい?」
「住宅ローンはいくらまでなら大丈夫?」
「NISAでは何を買えばいい?」
「老後資金はいくら必要?」
AIに聞けば、かなり具体的な答えが返ってくるようになっています。
便利な時代です。
でも、最後に忘れてはいけないことがあります。
AIは、どれだけ賢くなっても、
「あなたの代わりに人生の責任を取ってくれる存在」ではありません。
買い物をするのも、住宅ローンを組むのも、資産を運用するのも、最終的に決めるのは自分です。
AIは、
「あなたは、これを買うかもしれません」
と教えてくれる。
「こうしたほうがいいかもしれません」
とも言ってくれる。
でも、
「その選択の結果について、私が責任を取ります」
とは言ってくれません。
AIが私たちの「未来の買い物」まで予測する時代。
便利になるほど、最後に必要になるのは、意外にも昔から変わらない、
「自分で考えて、自分で決める力」
なのかもしれません。
AIに人生を先回りされるのか。
それとも、AIを上手に使って、自分の人生をもっと便利にするのか。
これからの時代、その違いは意外と大きくなっていくのではないでしょうか。
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